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SIMTと西田哲学の論文が海外学術誌に掲載|マインドフルメイト

SIMTと西田哲学に関する論文が海外の査読付き学術誌にオンライン掲載されました

日本で開発されたマインドフルネス心理療法「SIMT(自己洞察瞑想療法)」と、西田幾多郎の哲学との関係を考察した論文が、ジョンズ・ホプキンズ大学出版局の査読付き学術誌『Philosophy, Psychiatry, & Psychology』にオンライン先行公開されました。

マインドフルメイトでは、2010年の活動開始以来、SIMTを基盤として、うつや不安、パニック、PTSDなどのつらい症状を抱える方々への相談・実践支援を続けてきました。

今回の論文は、マインドフルメイトの活動や支援の効果を直接検証したものではありません。しかし、私たちが実践しているSIMTが、どのような哲学的背景を持ち、一般的なリラクゼーションを目的としたマインドフルネスとどのように異なるのかを理解するうえで、重要な学術資料になると考えています。

掲載された論文について

論文名

“Nishida Kitaro’s Philosophy as a Non-Religious Foundation for Mindfulness Interventions: Self-Insight Meditation Therapy as Clinical Operationalization”

日本語訳

「マインドフルネス介入の非宗教的基盤としての西田幾多郎哲学――臨床的操作化としての自己洞察瞑想療法」

著者

  • 藤田益伸氏
    大阪人間科学大学 心理学部心理学科
  • 村椿智彦氏
    東北大学大学院医学系研究科・東北大学病院心療内科
  • 大田健次郎氏
    特定非営利活動法人マインドフルネス総合研究所理事長・SIMT開発者

掲載誌

『Philosophy, Psychiatry, & Psychology』

発行元

ジョンズ・ホプキンズ大学出版局
Johns Hopkins University Press

DOI

10.1353/ppp.0.a1003922

本論文は、オンライン先行公開の段階です。巻号や掲載ページを伴う通常号への収録情報については、正式に確認でき次第、本ページに追記します。

この論文では何が論じられているのでしょうか

現在、世界各地で行われているマインドフルネスの多くは、仏教の瞑想的伝統から技法を取り入れながら、医療、心理、教育、福祉などの分野で活用できるよう、宗教的な要素を切り離した形で発展してきました。

一方で、「マインドフルネスによって、自己と世界との関係をどのように理解するのか」「瞑想中の気づきを、現実の生活や行動にどう結びつけるのか」という哲学的な基盤については、十分に整理されていない面があります。

本論文では、日本を代表する哲学者である西田幾多郎の哲学が、マインドフルネス介入を支える非宗教的な哲学的基盤になり得ることが論じられています。

特に取り上げられているのが、西田哲学の「場所」と「行為的直観」という考え方です。

西田哲学の「場所」とは

私たちは、自分と周囲の世界を、それぞれ別のものとして考えがちです。

しかし、実際の生活では、私たちの心や行動は、家族、職場、社会、過去の経験、その場で起きている出来事など、さまざまな関係の中で生じています。

西田哲学における「場所」は、自己と世界が切り離されて存在するのではなく、相互に関係しながら共に成り立っている場を捉える考え方です。

私たちの心に生じる不安、怒り、悲しみ、緊張なども、自分の内側だけで完結するものではありません。人との関係や生活環境、その時の状況などとの関わりの中で起きています。

したがって、心の問題を理解するためには、自分の内面だけを見るのではなく、自分と周囲の世界との関係にも目を向ける必要があります。

「行為的直観」とSIMTの実践

「行為的直観」とは、頭の中で物事を理解するだけでなく、実際に行動し、その行動を通して現実を捉えていくという考え方です。

マインドフルネスというと、静かな場所に座り、呼吸に意識を向ける瞑想を思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろん、呼吸に意識を向け、自分の思考、感情、身体感覚などを観察することは大切です。

しかし、SIMTでは、瞑想中に気づきを得ることだけを目的としていません。

日常生活や対人関係の中で、自分の心に何が起きているのかに気づき、その場でどのような行動を選択するのかを大切にします。

たとえば、誰かの言葉を受けて怒りや不安が生じたとき、その感情に流されてすぐに反応するのではなく、

  • 今、自分の中にどのような感情があるのか
  • 身体のどこに緊張が現れているのか
  • どのような考えが浮かんでいるのか
  • 自分が本当に大切にしたいことは何か
  • この場でどのような行動を選ぶのか

ということを観察します。

そして、自分が大切にする価値につながる行動を、現実の中で選択していきます。

このように、気づきを実際の行動へ結びつけるSIMTの特徴が、西田哲学の「行為的直観」を臨床的に実践可能な形へ具体化したものとして、本論文では考察されています。

SIMTが大切にしている自己洞察

SIMTは、「自己洞察瞑想療法」と訳されます。

ここでいう自己洞察とは、自分を責めたり、自分の欠点を探したりすることではありません。

自分の中に起きる思考、感情、身体感覚、欲求、行動などを丁寧に観察し、どのような心の働きが苦しみを深めているのかに気づいていくことです。

私たちは、つらい出来事があると、過去のことを何度も考えたり、まだ起きていない未来を心配したり、自分や他人を責め続けたりすることがあります。

そうした心の働きを無理に消そうとするのではなく、「今、このような考えが起きている」「今、不安が強くなっている」と観察します。そのうえで、これまでとは異なる行動を選ぶ練習を重ねていきます。

この実践は、短時間の瞑想だけで完結するものではありません。日常生活そのものを実践の場として、繰り返し取り組むことを大切にしています。

この論文が証明したことと、証明していないこと

本論文を正しく理解するためには、研究の内容と範囲を明確に区別する必要があります。

今回の論文は、西田哲学とSIMTとの関係を理論的・哲学的に考察したものです。

そのため、この論文だけによって、

  • SIMTがすべての人に有効である
  • うつや不安が必ず改善する
  • マインドフルメイトの支援効果が証明された
  • 医療機関での治療が必要なくなる

ということが示されたわけではありません。

また、本論文は、マインドフルメイトが行っている活動を直接の研究対象としたものでもありません。

一方で、SIMTが単なる呼吸法やリラクゼーションではなく、自己と世界との関係を捉え、日常生活における行動の選択までを重視する実践体系であることを理解するうえで、意義のある研究だと考えています。

マインドフルメイトとSIMT

マインドフルメイトでは、2010年から、心の不調を抱える方への無料相談会や、SIMTを基盤とした継続的な実践支援を行ってきました。

これまでの相談では、医療機関への通院や服薬、カウンセリング、そのほかの方法に取り組みながらも、長い間つらい状態が続いているという方からも、お話を伺ってきました。

私たちは医療機関ではなく、診断、投薬、医療行為を行うことはできません。また、医師の治療に代わることを目的としているわけでもありません。

医療機関で治療を受けている方には、治療や服薬を継続していただきながら、日常生活の中で自分の心の働きを観察し、自己洞察を深めていくための実践を支援しています。

薬の変更や減薬・中断については、必ず主治医に相談していただくようお願いしています。

研究による知見と実践現場の記録を区別して伝えます

マインドフルメイトでは、活動の中で参加者の経過や体験、実践上の課題などを記録してきました。

これらは、一定の条件で対象者を募集し、対照群を設定して効果を検証する臨床試験ではありません。そのため、マインドフルメイトが保有する記録だけによって、SIMTの医学的な治療効果を証明することはできません。

一方で、実際に悩みを抱えながら生活している方が、継続的な実践の中でどのような経過をたどったのかを記録することには、実践現場から得られた資料としての意味があると考えています。

私たちは、学術研究による知見と、活動の中で得られた実践記録や参加者の体験を同じものとして扱わず、その違いと限界を明示しながら情報をお伝えします。

詳しくは、次のページをご覧ください。

長い間つらい状態が続いている方へ

うつや不安、パニック、PTSDなどの症状が長く続くと、「何をしても変わらないのではないか」「このまま一生続くのではないか」と不安になることがあります。

そのような状態にあるとき、一人だけで答えを出そうとする必要はありません。

マインドフルメイトでは、現在のお悩み、これまで受けてきた治療や支援、生活の中で困っていることなどをお伺いする無料相談会を行っています。

相談を受けたからといって、必ずセッションへの参加を求めることはありません。現在の状態やご希望を伺いながら、マインドフルネスの実践が適しているかどうかも含めて、一緒に考えていきます。

長年にわたり、さまざまな方法に取り組みながらも、回復への手がかりが見つからないと感じている方は、まずは現在のお悩みをお聞かせください。

無料相談会の内容と開催日程を見る


執筆・監修

佐藤福男
非営利型一般社団法人マインドフルメイト代表理事
マインドフルネス瞑想療法士

2010年から、うつ、不安、パニック、PTSDなどの心の課題を抱える方への相談・実践支援を行っています。

更新情報

  • 2026年10月:論文のオンライン先行公開を確認し、本ページを作成しました。
  • 巻号・掲載ページが決定した際には、書誌情報を追記します。

参考情報

  • Yoshinobu Fujita, Tomohiko Muratsubaki, Kenjiro Ohta
    “Nishida Kitaro’s Philosophy as a Non-Religious Foundation for Mindfulness Interventions: Self-Insight Meditation Therapy as Clinical Operationalization”
  • 掲載誌:『Philosophy, Psychiatry, & Psychology』
  • 発行元:Johns Hopkins University Press
  • DOI:10.1353/ppp.0.a1003922

この記事は以下の方が執筆しています。


投稿者情報:佐藤福男-非営利型一般社団マインドフルメイト代表理事
山梨県を拠点に、東京都(八王子市・八重洲・日比谷)、愛知県名古屋市などで、マインドフルネスや心のケアに関する活動・情報発信を行っています。2010年より、ストレス、不安、人間関係などに悩む方々への支援活動を続け、これまでに600名以上の方に携わってまいりました。
「自分らしく生きていく」をテーマに、日常生活に活かせるマインドフルネスや、心を整えるためのヒントを発信しています。このサイトが、少しでも心を落ち着け、自分自身を大切にするきっかけとなりましたら幸いです。
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