うつ病・不安障害で三度の休職を経験したK.Nさんが、再び普通の生活を取り戻すまで

2026年10月15日

うつ病・不安障害で三度の休職を経験したK.Nさん

呼吸法と自己洞察を続けながら、再び普通の生活を取り戻すまで

茨城県にお住まいのK.Nさん(30代・男性)は、うつ病と不安障害に悩み、これまでに三度の休職を経験しました。

症状を改善したいという思いから、医療機関を受診して薬物療法を受けるだけでなく、認知行動療法やNLP、断食など、さまざまな方法にも取り組んできました。

しかし、一時的に状態が落ち着いたように思えても、しばらくすると再び症状が現れ、そのたびに仕事を続けることが難しくなりました。

「今度こそ大丈夫だと思っていたのに、また同じことを繰り返してしまった」

「これほど努力しているのに、なぜ良くならないのだろう」

そのような思いが重なる中で、K.Nさんは少しずつ自信を失っていきました。

うつ病や不安障害の苦しさは、症状そのものだけではありません。

何度も調子を崩すことで、これまで当たり前にできていた仕事や外出、人との交流が難しくなります。そして、「また具合が悪くなるのではないか」という不安によって、行動できる範囲も少しずつ狭くなっていきます。

K.Nさんも、まさにそのような状態にありました。

これは、さまざまな治療や方法を試しても思うような改善がみられず、先の見えない状況に悩みながら、それでも回復する道を探し続けた一人の方の体験です。

なお、プライバシー保護のため、個人を特定できる情報の一部を伏せています。また、ここでご紹介する内容は一人の方の体験であり、すべての方に同じ経過や結果が得られることを示すものではありません。

三度目の休職で失われていった自信

一度目の休職であれば、「しばらく休めば、また元に戻れる」と考えることができるかもしれません。

ところが、二度、三度と休職を繰り返すと、本人の受け止め方は大きく変わります。

「復職しても、また同じことになるのではないか」

「自分には、もう仕事を続ける力がないのではないか」

「周囲から、どのように思われているのだろう」

そのような不安が次々に浮かび、症状が落ち着いているときでさえ、将来のことを考えると心が重くなります。

K.Nさんも、三度目の休職を経験したことで、自分の力に対する信頼を失いかけていました。

身体を休めても、心の中には仕事への不安や自己否定の思いが残ります。元気だった頃の自分と現在の自分を比べては、「以前はできていたのに、今はできない」と落ち込みました。

外出しようと思っても疲れや不安が先に立ち、人と会うことも負担になります。できないことが増えるにつれて、生活の範囲が狭くなり、それがさらに自信を失わせる原因になっていきました。

本当は元の生活に戻りたい。

もう一度、自分の力で働きたい。

しかし、頑張ろうとすると心身がついてこない。

休んでいると、「このままでよいのだろうか」という焦りが強くなる。

その間で揺れ続けることが、K.Nさんを苦しめていました。

薬だけでは解決できないものを感じる

K.Nさんは医療現場に身を置く立場でもありました。そのため、薬物療法の役割や必要性を理解する一方で、薬だけでは解決できない部分があることも感じていました。

薬によって症状が和らぐことはあります。眠れるようになったり、強い不安が軽くなったりすることは、状態の悪い時期を乗り越えるうえで大切です。

しかし、薬を服用していても、仕事や人間関係の中で受けるストレスへの向き合い方や、自分を追い込んでしまう心の動きが、すべて変わるわけではありません。

K.Nさんは、症状が再発するたびに、

「薬を飲んでいるのに、なぜ再び悪くなるのだろう」

「自分の中には、まだ向き合えていない問題があるのではないか」

と考えるようになりました。

もちろん、これは薬物療法そのものを否定するものではありません。

医師の診察を受け、必要な薬を適切に服用することは重要です。その一方で、K.Nさんは、自分自身も回復に関わっていける方法を必要としていました。

薬を飲んで症状が治まるのを待つだけではなく、自分の心や身体に何が起きているのかを理解し、調子を崩しそうになったときに、自分で対処する力を身につけたいと考えたのです。

さまざまな方法に取り組んでも、再発を止められない

K.Nさんは、決して何もせずに回復を待っていたわけではありません。

認知行動療法をはじめ、NLPや断食など、良いと言われる方法を調べ、実際に取り組んできました。

それぞれの方法から学んだこともあり、一時的に調子が良くなったと感じることもありました。しかし、K.Nさんが求めていたのは、一時的に気分を楽にすることだけではありませんでした。

再び同じ状態に戻らないために、自分の心に起きていることを根本から理解し、生活の中で実践できる方法を探していました。

それでも、症状は再発しました。

三度目の休職を迎えたときには、「もう試せることは残っていないのではないか」という思いさえ生まれていました。

人は、努力しても結果が得られない状況が続くと、自分の努力だけでなく、自分自身の価値まで否定したくなることがあります。

「何をしても駄目だった」

という経験が、

「自分は何をしても駄目な人間だ」

という自己否定へ変わってしまうのです。

K.Nさんにとって、最も大きな問題の一つは、症状があることだけではありませんでした。

症状を繰り返すうちに、自分を信じる力が弱くなり、将来に希望を持てなくなっていたことです。

マインドフルネス(自己洞察法)との出会い

そのような中でK.Nさんは、マインドフルネス(自己洞察法)心理療法を知りました。

マインドフルネスという言葉自体は、以前から耳にしたことがあったかもしれません。しかし、単にリラックスするための瞑想や、気持ちを落ち着ける方法としてではなく、日常生活の中で自分の心の動きを観察し、症状に巻き込まれる前に気づいていく方法として関心を持ちました。

そして、マインドフルメイトの無料相談を経て、佐藤によるセッションを受講することになりました。

セッションが始まったからといって、すぐに症状がなくなったわけではありません。

長い時間をかけて形づくられた心身の反応は、短期間で大きく変わるものではありません。呼吸法も、一度行えばすべての不安が消えるというものではありません。

K.Nさんが取り組んだのは、毎日の呼吸法と、自分の心や身体に起きていることを丁寧に観察する実践でした。

気分が落ち込んだとき、自分の中にどのような考えが浮かんでいるのか。

不安が強くなったとき、身体にはどのような反応が起きているのか。

誰かの言葉に傷ついたとき、自分はその言葉をどのように受け止めているのか。

それらをすぐに良い方向へ変えようとするのではなく、まず「今、自分の中で何が起きているのか」に気づくことから始めました。

呼吸法を続ける中で起きた変化

実践を続けるうちに、K.Nさんの中に少しずつ変化が現れました。

以前は、気分が落ち込み始めると、そのまま自己否定の思考に巻き込まれていました。

「自分は駄目だ」

「また失敗する」

「この先も良くならない」

そのような考えが次々に浮かび、考えれば考えるほど気分が沈み、身体も動かなくなっていきます。そして、何もできない自分をさらに責めるという悪循環に陥っていました。

しかし、自己洞察の実践を続ける中で、

「今、自分はまた自分を否定し始めている」

「いつもの悪い流れに入りかけている」

と、その途中で気づけることが増えていきました。

ここが、K.Nさんにとって大きな転換点になりました。

自己否定の考えが一切浮かばなくなったわけではありません。不安や落ち込みが完全になくなったわけでもありません。

それでも、考えに飲み込まれてしまう前に、その状態に気づくことができるようになったのです。

そして、気づいたときには呼吸法を行い、意識を呼吸や身体、今行うべきことへ戻すようにしました。

何度も繰り返すうちに、症状の波に振り回され続ける時間が、以前より短くなっていきました。

「落ち込んではいけない」と無理に抑え込むのではなく、「今、落ち込みが起きている」と気づき、その状態からどのように次の行動へ移るのかを考えられるようになりました。

気分の落ち込みと背部痛の軽減

K.Nさんには、精神的な症状だけでなく、背中の痛みもありました。

心と身体は、別々に存在しているわけではありません。緊張や不安が長く続くと、身体にも力が入り続け、痛みや疲労感として現れることがあります。

呼吸法と自己洞察を続ける中で、K.Nさんは気分の落ち込みだけでなく、背部痛についても以前より軽くなったと感じるようになりました。

身体の変化に気づけるようになったことも重要でした。

以前は、強い痛みや疲れが出てから、ようやく「無理をしていた」と気づいていました。

しかし、実践を重ねることで、

「今日は身体に力が入っている」

「呼吸が浅くなっている」

「疲れているのに、無理に動こうとしている」

といった小さな変化を、早い段階で捉えられるようになりました。

早く気づくことができれば、ひどくなる前に休むことも、呼吸を整えることもできます。

これは、症状を完全になくすこととは異なります。

自分の状態を把握し、悪化を防ぐための行動を選べるようになることです。

その力は、再び社会生活へ戻るうえで、大きな支えになりました。

症状があっても、すべてを諦めない

回復について考えるとき、私たちは「症状が完全になくならなければ、何もできない」と考えてしまうことがあります。

確かに、症状が強い時期には十分な休養が必要です。無理に復職したり、以前と同じ活動量へ戻したりすることは、かえって状態を悪くする可能性があります。

その一方で、症状が少し残っていても、自分の状態を理解し、無理をしない範囲を見極めながら、できることから生活を広げていく道もあります。

K.Nさんには、易疲労感や気分の落ち込みが残っていました。

それでも、以前のように症状の一つひとつに過剰にとらわれ、

「この症状があるから、もう何もできない」

と決めつけることが少なくなっていきました。

疲れたときには、その疲れに気づく。

落ち込みが始まったときには、自己否定の思考に巻き込まれていないかを確認する。

必要なときには休み、呼吸法を行い、今できることへ意識を戻していく。

そうした実践を積み重ねながら、K.Nさんは非常勤という形で仕事に復帰しました。

三度の休職を経験し、自信を失いかけていたK.Nさんにとって、これは大きな一歩でした。

以前と同じ働き方に一気に戻るのではなく、自分の現在の状態に合った形で社会とのつながりを取り戻したのです。

復職は終着点ではなく、新しい実践の始まり

仕事に戻れたからといって、すべてが解決したわけではありません。

復職すると、新しい緊張や不安も生まれます。

「また調子を崩したらどうしよう」

「周囲に迷惑をかけないだろうか」

「以前と同じように働けるだろうか」

そうした思いが現れることは、決して不自然なことではありません。

大切なのは、不安をなくそうと力を入れ過ぎることではなく、不安が生じたときに、それに気づき、必要な対応を取ることです。

K.Nさんにとって、呼吸法と自己洞察は、休職中だけに行う特別な訓練ではなくなりました。

仕事の前後や、人とのやり取りで心が揺れたとき、疲れを感じたときなど、日常生活の中で自分を支える方法になっていきました。

自分の特徴を知ることも、回復に欠かせない要素です。

どのような場面で無理をしやすいのか。

どのような言葉を受けたときに、自分を否定しやすいのか。

疲れているときに、どのような考え方へ傾きやすいのか。

それらを理解することで、調子を崩してから対処するのではなく、早めに立ち止まることができます。

K.Nさんは、症状を敵として排除するだけではなく、自分の状態を知らせるサインとして受け止めることも学んでいきました。

減薬・断薬、そして治癒を目指して

K.Nさんは、今後も呼吸法と自己洞察を続けながら、自分自身の特徴をさらに理解し、減薬・断薬、そして治癒を目指していきたいと考えています。

ただし、減薬や断薬は、本人だけの判断で進めるものではありません。

薬を急に減らしたり中止したりすると、離脱症状や症状の悪化が起こる可能性があります。服薬を見直す際には、必ず主治医と相談し、状態を確認しながら慎重に進める必要があります。

また、治癒や回復の形は、人によって異なります。

薬を飲んでいるかどうかだけで、その人の回復を判断することはできません。仕事や家庭生活をどのように送れているのか、自分の状態に気づいて対処できているのか、自分らしい生き方を取り戻しているのかという点も大切です。

K.Nさんの歩みも、まだ途中です。

易疲労感や気分の落ち込みが現れることもあり、すべての不安がなくなったわけではありません。

それでも、症状が出るたびに絶望し、自分を全面的に否定していた頃とは違います。

今では、

「落ち込みが出ている」

「疲れがたまっている」

「自己否定の考えに巻き込まれそうになっている」

と気づき、呼吸法を使いながら、次に何をするべきかを選べるようになりました。

症状があることと、人生を諦めることは同じではありません。

苦しい状態が起きても、それに気づき、自分を立て直し、再び歩き始めることはできます。

K.Nさんの体験から見えてくること

K.Nさんの体験から、私たちは大切なことを教えていただきました。

それは、回復とは、つらい感情や症状が一切起こらない人になることではなく、自分に起きていることを理解し、悪循環に深く入り込む前に、対応できる力を育てていくことでもあるということです。

三度の休職を経験した事実は変えられません。

しかし、その経験を、自分を責め続ける理由にするのか、自分の心身の特徴を知り、これからの生き方を見直す機会にするのかによって、その後の歩みは変わります。

もちろん、苦しい最中に前向きになることを求める必要はありません。

まずは休み、つらさを誰かに話し、必要な医療や支援につながることが大切です。そのうえで、自分にも取り組めることがあると感じられたとき、小さな実践を始めていけばよいのです。

呼吸に意識を向けること。

自分の中に浮かんだ考えに気づくこと。

身体の緊張や疲れを確認すること。

そして、今の自分にできる行動を一つ選ぶこと。

その小さな積み重ねが、やがて生活を取り戻す力につながる場合があります。

一人で抱え込まずにご相談ください

うつ病や不安障害が長引き、治療やさまざまな方法に取り組んでも、思うような改善がみられないと、

「自分には、もう方法が残されていない」

と感じてしまうことがあります。

しかし、これまでの方法で十分な結果が得られなかったことは、あなたに回復する力がないという意味ではありません。

その方法が、現在の状態や悩み方に合っていなかった可能性もあります。あるいは、理解することはできても、日常生活の中で実践するための支援が十分ではなかったのかもしれません。

マインドフルメイトでは、これまでの治療や生活の経過、現在困っていること、回復後に取り戻したい生活などを丁寧に伺ったうえで、マインドフルネス(自己洞察法)の実践についてご説明しています。

無理に参加を勧めることはありません。

まずは、ご自身の苦しさや、これまで取り組んできたことをお聞かせください。

三度の休職を経験したK.Nさんも、一足飛びに現在の状態へ至ったわけではありません。

呼吸法と自己洞察を繰り返しながら、少しずつ自分の心身の特徴を理解し、症状に振り回される時間を減らし、非常勤という形で仕事に戻りました。

回復の歩みには個人差があり、時間が必要になることもあります。

それでも、自分の状態に気づき、自分を立て直す力を育てていくことは、これからの人生を自分らしく歩むための大切な支えになります。

今、先が見えずに苦しんでいる方にも、できることは残されています。

焦らず、一人で抱え込まず、ご自身に合った回復への一歩を探していきましょう。


※本記事は、ご本人の体験をもとに、個人が特定されないよう一部の情報を伏せて構成しています。これは一人の方の体験であり、同じ方法によってすべての方に同様の結果が得られることを保証するものではありません。症状がある場合は医療機関へ相談し、服薬の変更・減薬・中止については、必ず主治医の指示を受けてください。