認知行動療法が合わないと感じている方へ|自分の考え方を変えることが苦しいときに
2026年10月5日

認知行動療法が合わないと感じている方へ|自分の考え方を変えることが苦しいときに
うつ病や不安症などのつらい症状を改善したいと願い、認知行動療法に取り組んでいるものの、
「教えていただいたことは理解できるけれど、どうしても自分の考え方を変えられない」
「前向きに考えようとしても、いつの間にか同じ不安や苦しみに戻ってしまう」
「課題に取り組むことが負担になり、かえって自分を責めるようになってしまった」
そのように感じている方はいないでしょうか。
認知行動療法では、自分の考え方の傾向に気づき、物事を別の角度から捉え直していくことがあります。しかし、長い年月の中で身についた考え方は、「違う見方をしてみましょう」と言われたからといって、すぐに変えられるものではありません。
頭では「そう考えればよい」と分かっていても、心がどうしてもついていかないことがあります。分かっているのにできないからこそ、いっそう苦しくなってしまうこともあるのではないでしょうか。
また、認知行動療法が自分には合っていないように感じても、そのことを担当する医師や支援者に伝えるのは簡単ではありません。
「せっかく一生懸命に指導してくれているのに申し訳ない」
「合わないと伝えたら、自分の努力が足りないと思われるのではないか」
「もう少し頑張ればできるようになるかもしれない」
そのように考え、苦しさを抱えたまま続けている方もいると思います。
認知行動療法によって改善へ向かう方がいる一方で、その進め方がすべての方に同じように合うとは限りません。人によって、これまで歩んできた人生も、抱えている苦しみも、心の状態も異なるからです。
大切なのは、無理に自分の考え方を変えようとすることだけではありません。今、自分の中にどのような思いや感情があり、なぜそれほど苦しくなっているのかを、急がず丁寧に見つめていくことも必要です。
この文章では、認知行動療法に取り組みながらも苦しさを感じている方と一緒に、「なぜ考え方を変えることが難しいのか」「合わないと感じたとき、どのような道を考えられるのか」を見つめていきたいと思います。
認知行動療法とはどんな療法なのか
認知行動療法は、英語では「Cognitive Behavioral Therapy」と呼ばれ、その頭文字を取って「CBT」と表記されることもあります。
認知行動療法について考える前に、まず「認知」という言葉の意味を確認しておきたいと思います。
「認知」という言葉は少し難しく聞こえますが、ここでは分かりやすく、物事の受け止め方や考え方と捉えることができます。
私たちは、何か出来事が起きたとき、その出来事だけによって気持ちが決まるわけではありません。その出来事を自分がどのように受け止め、どのように考えたかによって、心に生まれる感情や、その後の行動が変わることがあります。
例えば、親しい方にメールを送ったのに、なかなか返事が来なかったとします。
そのとき、
「忙しくて、まだメールを見ていないのかもしれない」
と考えることができれば、それほど強い不安を感じずに待つことができるかもしれません。
しかし、
「自分は何か気に障ることを書いてしまったのではないか」
「嫌われてしまったのではないか」
「もう関わりたくないと思われているのではないか」
と考えると、不安や悲しみが大きくなり、何度もメールを確認したり、相手に連絡することが怖くなったりすることがあります。
このように、同じ出来事であっても、その出来事をどのように受け止め、どのように考えるかによって、心に生まれる感情や行動が変わってくることがあります。
認知行動療法では、このような物事の受け止め方や考え方と、感情や行動との関係に目を向けていきます。国立精神・神経医療研究センターも、「認知」を物事の受け取り方や考え方という意味で説明し、考え方のバランスを取りながらストレスへ対応できる心の状態をつくる療法だとしています。
自然に浮かんでくる考えに気づく
何かが起きたとき、私たちの心には、さまざまな考えやイメージが自然に浮かんできます。
こうした、その瞬間に浮かぶ考えは、認知行動療法では「自動思考」と呼ばれています。
自動思考は、自分で時間をかけて考えて出した結論ではありません。あまりにも自然に浮かんでくるため、自分ではそれが一つの考え方であることに気づかず、事実そのもののように感じることがあります。
気持ちが落ち込んでいるときには、
「何をしてもうまくいかない」
「自分には何の価値もない」
「この苦しみは、これからもずっと続く」
といった考えが浮かびやすくなることがあります。
また、不安が強いときには、
「きっと悪いことが起こる」
「失敗したら、すべてが終わってしまう」
「人から変に思われているに違いない」
と考えてしまうこともあります。
認知行動療法では、このように自然に浮かんでくる考えに気づき、それが自分の感情や行動にどのような影響を与えているのかを、治療者や支援者と一緒に整理していきます。
無理に前向きに考える療法ではない
認知行動療法は、単に「悪いことを考えないようにしましょう」「もっと前向きに考えましょう」と指導する療法ではありません。
自分の中に浮かんだ考えを確認しながら、
「本当にそのように言い切れるだろうか」
「ほかの見方はできないだろうか」
「自分と同じことで悩んでいる人には、どのような言葉をかけるだろうか」
「これまでに、自分が考えていたこととは異なる結果になったことはなかっただろうか」
など、一つの考え方だけにとらわれず、別の見方や可能性を探していきます。
つまり、無理に明るく考えることを目指すのではなく、自分を苦しめている考え方に気づき、現実に即した、より柔軟でバランスの取れた考え方を見つけていくことが基本になります。
考え方だけでなく、行動にも目を向ける
認知行動療法は、その名称のとおり、考え方だけでなく「行動」にも目を向けます。
心がつらくなると、人に会うことや外出することを避けたり、それまで続けていた活動ができなくなったりすることがあります。そして、行動できない自分を責めることで、さらに気持ちが落ち込んでしまう場合があります。
そこで、その方の状態に合わせて、日々の生活や気分を記録したり、無理なくできる小さな行動から始めたり、避けていたことへ段階的に取り組んだりする方法が用いられます。
具体的な内容は、うつ病、不安症、パニック症、強迫症、PTSDなど、対象となる症状や、その方の状態によって異なります。厚生労働省も、うつ病や複数の不安症などについて、それぞれの認知行動療法マニュアルを公開しています。
治療者と一緒に取り組む心理療法
認知行動療法は、本来、治療者が一方的に正しい考え方を教え、相談者がそれに従うだけのものではありません。
困っていることや目標を治療者と相談しながら整理し、現在の考え方、感情、身体の反応、行動のつながりを一緒に確認していく心理療法です。
面接の中だけでなく、日常生活の中で自分の心の動きを記録したり、話し合った方法を試したりする課題が出されることもあります。こうした取り組みを重ねながら、最終的には、自分自身で心の状態に気づき、困難に対応する力を身につけることを目指します。
ただ、ここまで認知行動療法の基本的な考え方を確認すると、理論としては納得できる方も多いと思います。
一方で、実際に自分のこととして取り組んでみると、
「自分の考え方をうまく整理できない」
「別の見方があることは分かっても、心からそう思うことができない」
「考え方を見直そうとするほど、苦しくなってしまう」
ということも起こります。
認知行動療法がどのような療法かを理解することと、実際に自分の考え方を見つめ、変えていくことは同じではありません。

認知行動療法のメリット・デメリット
認知行動療法には、つらい気持ちや行動の背景にある考え方を整理し、日常生活の中で対処する力を身につけられるというメリットがあります。
その一方で、自分の考え方を見つめ直すことが負担になったり、方法を理解できても実際には取り組めなかったりすることがあります。
ここでは、認知行動療法のメリットとデメリットの両方を確認してみたいと思います。
認知行動療法のメリット
1.自分の苦しさを整理しやすくなる
認知行動療法では、何か出来事が起きたときの「考え方」「感情」「身体の反応」「行動」を分けて見つめていきます。
それによって、漠然としていた苦しさを、
「この出来事を、このように受け止めたことで不安が強くなった」
「不安が強くなり、その場所を避けるようになった」
というように整理しやすくなります。
自分の心の中で何が起きているのかが見えてくると、どの部分に取り組めばよいのかを考えやすくなります。
2.考え方の偏りに気づく機会になる
心がつらいときには、物事を必要以上に悪く受け止めたり、自分を厳しく責めたりすることがあります。
「一度失敗したら、すべてが終わりだ」
「相手の返事がないのは、自分が嫌われているからだ」
「何もできない自分には価値がない」
このような考えが浮かんだとき、その考えをすぐに事実と決めつけず、ほかの見方や可能性がないかを考えていきます。
認知行動療法は、無理に前向きな考えへ置き換えることではなく、考え方のバランスを取りながら、ストレスに対応しやすい状態を目指す心理療法です。
3.日常生活の中で具体的に取り組める
認知行動療法では、話を聞くだけでなく、日々の気分や行動を記録したり、無理のない範囲で小さな行動を試したりします。
例えば、
- 毎日の気分を記録する
- 不安を感じたときの考えを書き出す
- できなくなっていたことに少しずつ取り組む
- 避けていた場面に段階を踏んで向き合う
など、その方の症状や状態に合わせた方法が用いられます。
取り組んだ内容を振り返ることで、自分の変化に気づきやすいこともメリットの一つです。
4.自分で対処する力を養える
認知行動療法では、治療者から答えを与えてもらうだけでなく、治療者と一緒に、自分に合った対処方法を探していきます。
その方法を日常生活の中で繰り返し試すことで、つらい出来事が起きたときにも、自分で心の状態を整理し、対処する力を身につけることを目指します。
認知療法には、自分自身で対処する力を育てていく「セルフヘルプ」の考え方があると説明されています。
認知行動療法のデメリットや難しさ
1.自分の考え方を変えることは簡単ではない
認知行動療法の考え方を説明されて、
「なるほど、そのように考えればよいのか」
と、頭では理解できることがあります。
しかし、頭で理解することと、実際に自分の考え方が変わることは同じではありません。
私たちの考え方には、それまでの人生経験、家庭環境、人間関係、つらい体験などが深く関係しています。そのため、長い年月の中で身についた考え方を、短期間で変えることは容易ではありません。
別の見方を教えられても、
「理屈では分かるけれど、どうしてもそう思えない」
「考え方を変えようとすると、自分の気持ちを否定しているように感じる」
という方もいます。
ここが、認知行動療法に取り組むうえで、大きな難しさになる場合があります。
2.自分を見つめることが苦しくなる場合がある
自分の考え方や過去の出来事を振り返ることで、つらい感情が強くなることがあります。
心身ともに疲れているときや、不安や抑うつの症状が強いときには、自分の心を整理すること自体が大きな負担になる場合もあります。
「なぜ、このように考えてしまうのだろう」
「また同じ考え方をしてしまった」
と振り返るうちに、かえって自分を責めるようになってしまうこともあります。
本来は苦しさを軽くするための取り組みであっても、そのときの状態や進め方によっては、取り組むこと自体が苦しくなる可能性があります。
3.記録や課題が負担になることがある
認知行動療法では、面接の時間だけでなく、日常生活の中で記録や課題に取り組むことがあります。
しかし、気力や集中力が低下している方にとって、出来事や感情を書き出したり、決められた課題を続けたりすることは、決して簡単ではありません。
課題ができない日が続くと、
「自分は治療にも真面目に取り組めない」
「やはり自分は駄目なのだ」
と、新たな自己否定につながってしまうこともあります。
課題に取り組めないことを、本人の意欲や努力の不足だけで捉えないことが大切です。
4.治療者との関係や進め方に左右される
同じ認知行動療法でも、治療者の経験、説明の仕方、進める速さなどによって、受ける方の感じ方は異なります。
十分に話を聞いてもらえないまま、考え方の修正や課題を求められると、
「苦しさを理解してもらえない」
「正しい考え方を押しつけられている」
と感じることがあります。
また、本当は方法が合っていないと感じていても、治療者に遠慮して、その気持ちを伝えられない方もいます。
認知行動療法は、治療者と相談者が協力しながら進めることが基本です。そのため、方法そのものだけでなく、治療者との信頼関係や、安心して気持ちを伝えられる環境も重要になります。
5.専門的に受けられる場所が限られている
認知行動療法は、専門的な知識と技術を必要とする心理療法です。
しかし、訓練を受けた治療者による認知行動療法を受けられる医療機関は、国内ではまだ限られていると国立精神・神経医療研究センターも案内しています。
「認知行動療法を受けた」と思っていても、実際には短時間の説明や助言にとどまり、本来の方法を十分に受けられていない場合も考えられます。
合わないと感じることも、大切な気づきです
認知行動療法には、多くのメリットがあります。その一方で、自分の考え方を見つめたり、別の見方を探したりすることが、大きな負担になる方もいます。
大切なのは、認知行動療法が良い療法か悪い療法かを一律に判断することではありません。
今の自分の状態に合っているのか、安心して取り組めているのか、続けることで苦しさが強くなっていないかを、丁寧に確かめることです。
もし、認知行動療法を続けることが苦しいと感じているのであれば、その感覚を無理に押さえ込む必要はありません。
「合わないと感じている」ということも、自分に適した支援を探していくための大切な手がかりになります。

認知行動療法が合わないと感じたとき、どうしたらよいのでしょうか
認知行動療法について説明を受け、実際に取り組んでみたものの、
「考え方を書き出すことがつらい」
「別の考え方を探しても、心からそう思うことができない」
「課題を続けられず、自分を責めることが増えた」
「治療を受ける前より、苦しくなっているように感じる」
そのように思うことがあるかもしれません。
しかし、「認知行動療法が合わない」と感じたからといって、これまでの努力が足りなかったわけではありません。また、治そうとする気持ちが弱かったということでもありません。
つらい状態の中で説明を聞き、課題に取り組み、自分の心と向き合おうとしてきたこと自体が、決して簡単なことではなかったと思います。
それでも苦しさを感じているのであれば、無理に「自分の考え方を変えなければ」と追い込む前に、いったん立ち止まって、今の自分に何が起きているのかを確かめることが大切です。
まず、何がつらいのかを整理してみる
「認知行動療法が合わない」と感じる理由は、一人ひとり異なります。
例えば、次のようなことが負担になっている場合があります。
- 自分の考えや感情を言葉にすることが難しい
- 考え方を記録する課題が負担になっている
- 別の考え方を示されても、心から納得できない
- 過去のつらい出来事を振り返ると苦しくなる
- 課題ができないことで、自分を責めてしまう
- 治療者の説明や進める速さについていけない
- 自分の苦しさを十分に理解してもらえていないと感じる
- 何が合わないのか、自分でもうまく説明できない
すぐに答えを出す必要はありません。
「認知行動療法のすべてが合わない」のではなく、記録すること、考え方を見直すこと、課題に取り組むこと、治療者との関係など、特定の部分に負担を感じている可能性もあります。
まずは、「自分は何に苦しさを感じているのだろう」と、できる範囲で確認してみてください。
「合わない」と感じていることを伝えてみる
認知行動療法が合わないと感じていても、そのことを担当する医師や治療者に伝えるのは、とても難しいことだと思います。
「一生懸命に指導してくれているのに申し訳ない」
「自分の努力が足りないと思われるかもしれない」
「治療を拒否していると思われたらどうしよう」
「関係が悪くなってしまうのではないか」
そのような不安から、本当の気持ちを言えずにいる方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、合わないと感じていることを伝えるのは、治療を否定するためではありません。自分の現在の状態を知ってもらい、今後の進め方を一緒に考えるために必要なことです。
うまく説明できないときは、次のような短い言葉でも構いません。
「説明は理解できるのですが、自分の考え方を変えようとすると苦しくなります」
「課題に取り組めない自分を責めてしまいます」
「この方法が今の自分に合っているのか、不安を感じています」
「もう少しゆっくり進めていただくことはできますか」
「ほかの方法も含めて相談したいです」
口頭で伝えることが難しい場合は、感じていることを紙に書き、診察や面接のときに見せる方法もあります。
続けるか、やめるかだけで考えない
認知行動療法がつらいと感じたとき、「このまま我慢して続ける」か「すぐにやめる」かの二つだけで考えてしまうことがあります。
しかし、その間にも、いくつかの選択肢があります。
例えば、
- 課題の量を減らしてもらう
- 面接の進む速さを緩めてもらう
- 記録の方法を簡単にしてもらう
- 今は難しい課題を一時的に休む
- 困っていることを、もう一度丁寧に聞いてもらう
- 治療の目標を見直す
- 別の治療者や支援機関に相談する
- ほかの心理療法や支援方法を検討する
といった方法を考えることができます。
認知行動療法そのものが合っていない場合もあれば、現在の心身の状態、取り組む時期、課題の内容、進め方、治療者との関係などが影響している場合もあります。
「何が合わないのか」を少しずつ確認することで、必要な調整や次の選択肢が見えてくることがあります。
ほかの治療法や支援方法を考えてもよい
心理療法には、認知行動療法以外にもさまざまな考え方や方法があります。
自分の考え方を直接見直す方法が負担になる方には、まず身体の感覚や呼吸に意識を向ける方法、今の感情を否定せずに観察する方法、安心して話を聞いてもらうことを重視する方法などが、取り組みやすい場合もあります。
また、認知行動療法の中にも、考え方を変えることだけを中心とせず、気づきや受容を重視する方法があります。
どの方法が合うかは、その方の症状、心身の状態、これまでの経験、治療の目的などによって異なります。ほかの方法を検討することは、治療を諦めることではありません。自分に合った回復への道を探し直すことです。
医師に相談せず治療や服薬を中断しない
認知行動療法が合わないと感じた場合でも、通院や服薬を自己判断で急に中断することは避けてください。
認知行動療法と薬物療法は別の治療です。心理療法の進め方を見直したい場合であっても、現在服用している薬の変更や中止については、必ず主治医に相談することが大切です。
また、認知行動療法に取り組んだことで苦しさが強くなった、眠れなくなった、日常生活への影響が大きくなったという場合も、我慢を続けず、早めに担当する医師や治療者へ伝えてください。
合わないという感覚を置き去りにしないでください
認知行動療法によって改善へ向かう方がいる一方で、同じ方法がすべての方に同じように合うとは限りません。
大切なのは、周囲からよいと言われている方法に、自分を無理に合わせ続けることではありません。
「このまま続けてよいのだろうか」
「なぜか自分には苦しく感じる」
という心の声も、今後の治療や支援を考えるための大切な情報です。
今まで取り組んできたことを否定する必要はありません。その経験があったからこそ、自分には何が難しく、どのような支えが必要なのかが、少しずつ見えてくることもあります。
焦って結論を出すのではなく、今の苦しさを一人で抱え込まず、信頼できる医師や支援者と相談しながら、自分に合った方法を探していくことが大切です。

自分に合った療法を探すことも大切です
認知行動療法が自分には合わないと感じたとしても、それは回復への道が閉ざされたということではありません。
また、「多くの人に効果があるといわれている療法が自分には合わなかった」と、自分を責める必要もありません。
同じ病名で診断されていても、症状の現れ方、これまでの生活環境、つらい体験、人との関わり方、現在置かれている状況は、一人ひとり異なります。
当然、安心して取り組める療法や、心に届きやすい支援の方法も、その方によって違います。
大切なのは、世間で広く知られている療法に自分を無理に合わせることではありません。今の自分がどのようなことに苦しみ、どのような支えを必要としているのかを確かめながら、自分に合った方法を探していくことです。
療法の名前だけで決めない
心理療法について調べていると、
「うつ病には、この療法がよい」
「不安症には、この方法が効果的である」
という情報を目にすることがあります。
こうした情報は、療法を選ぶ際の一つの参考になります。しかし、一般的に評価されている療法であっても、すべての方が同じように取り組めるとは限りません。
同じ名称の療法でも、支援者の経験、説明の仕方、進める速さ、課題の内容によって、受ける方の感じ方は変わります。
そのため、療法の名前だけでなく、
- 自分の悩みや症状に対応した方法なのか
- どのような考え方で行われる療法なのか
- 実際に何を行うのか
- どのくらいの期間が必要なのか
- 自宅で行う課題はあるのか
- 今の自分の状態でも取り組めるのか
といった点を、始める前に確認することが大切です。
説明を聞いて分からないことがあれば、そのままにせず、支援者に質問してもよいのです。
安心して本当の気持ちを話せること
療法の内容と同じくらい大切なのが、支援者との関係です。
どれほど評価されている療法でも、自分の本当の気持ちを話せなければ、苦しさを抱えたまま進むことになってしまいます。
「今日は課題ができませんでした」
「説明を聞いても、納得できない部分があります」
「この取り組みをすると、かえって苦しくなります」
「もう少し私の話を聞いてほしいです」
そのようなことを、安心して伝えられるでしょうか。
支援者の話に賛成できないときや、取り組むことが難しいときにも、その気持ちを受け止めてもらえることが大切です。
何でもすぐに話せなければならないということではありません。しかし、少しずつでも本音を伝えられ、それについて一緒に考えてもらえる関係であるかどうかは、療法を続けていくうえで大切な判断材料になります。
無理なく続けられる方法か確かめる
療法によっては、記録、振り返り、読書、呼吸法、身体を動かすことなど、面接以外の時間にも取り組む課題があります。
適度な課題は、回復を支える助けになることがあります。しかし、今の心身の状態に対して負担が大きすぎれば、続けることが苦しくなってしまいます。
課題を続けられないときに、
「またできなかった」
「自分は意志が弱い」
と自分を責めるようになっていないでしょうか。
できないことを責められるのではなく、なぜ難しいのかを一緒に考え、内容や量を調整してもらえることも大切です。
療法は、苦しんでいる方をさらに追い詰めるためのものではありません。現在の状態に寄り添いながら、回復を支えるためのものであるはずです。
小さな変化も確認する
療法が自分に合っているかどうかは、一度受けただけでは分からないことがあります。
すぐに症状がなくならなくても、
- 以前より自分の気持ちに気づけるようになった
- 苦しくなったときの対処方法が少し分かってきた
- 不安があっても落ち着きを取り戻せる時間が増えた
- 自分を責め続ける時間が少し短くなった
- 支援者に本当の気持ちを話せるようになった
- 日常生活の中で、できることが少しずつ増えた
といった小さな変化が見られる場合があります。
反対に、一定期間取り組んでも苦しさが強くなるばかりであったり、療法を受けること自体が大きな負担になっていたりする場合は、そのことを支援者へ伝え、進め方を見直す必要があります。
別の方法を検討することは、逃げることではありません
一つの療法が合わなかったとき、別の療法や支援者を探すことに、後ろめたさを感じる方もいます。
「途中で諦めてしまった」
「もっと我慢して続けるべきだった」
「どこへ行っても同じかもしれない」
そのように思うことがあるかもしれません。
しかし、合わない方法を無理に続けることだけが努力ではありません。
自分の状態を見つめ、必要な支援を考え直し、別の方法を探してみることも、回復に向けた大切な行動です。
心理療法には、考え方を見直すことを中心にする方法だけでなく、感情を丁寧に受け止める方法、人との関係に目を向ける方法、行動から働きかける方法、身体感覚や呼吸への気づきを大切にする方法などがあります。
ただし、どの療法にも、合う方と合わない方がいます。新しい療法を始める場合も、「必ずよくなる」という説明だけで判断せず、内容や負担、期待できること、考えられる限界について確認することが大切です。
焦らず、自分の感覚も大切にしてください
つらい症状が続いていると、一日でも早く自分に合った療法を見つけたいと思うのは自然なことです。
しかし、焦るあまり、次々と療法を変え続けると、何が自分に合っていたのか分からなくなることもあります。
まずは、これまで受けてきた療法について、
「助けになったことは何か」
「何がつらかったのか」
「どのような支援であれば安心できそうか」
を整理してみてください。
そして、主治医や信頼できる支援者と相談しながら、自分に必要な方法を探していくことが大切です。現在の治療や服薬については自己判断で中断せず、変更を希望する場合は、必ず担当する医師へ相談してください。
自分に合った療法を探すことは、今までの治療を否定することではありません。
これまでの経験も大切にしながら、自分が安心して取り組むことができ、少しずつ本来の生活を取り戻していける方法を探していくことが、回復への新たな一歩になるのではないでしょうか。

考え方を無理に変えるのではなく、まず気づくことから
認知行動療法に取り組みながら、
「別の考え方があることは分かっているけれど、どうしても変えられない」
「考え方を変えようとするほど、かえって苦しくなってしまう」
と感じている方もいると思います。
そのような方にとって、自分の考え方をすぐに変えようとするのではなく、まずは自分の中で起きていることに気づくという方法が、一つの選択肢になる場合があります。
不安や悲しみ、怒りなどが生まれたとき、私たちは無意識のうちに、その感情をなくそうとしたり、考えないようにしたりします。
しかし、
「不安になってはいけない」
「もっと前向きに考えなければならない」
「いつまでも苦しんでいる自分は弱い」
と、自分の心を変えようとすればするほど、苦しさが強くなることもあります。
マインドフルネスでは、今の自分に生じている考えや感情を、すぐに良いもの、悪いものと判断したり、無理に変えようとしたりせず、まずはその存在に気づいていきます。
「今、自分の中に不安が生まれている」
「また、悪い結果を予測する考えが浮かんでいる」
「胸が苦しくなり、呼吸が浅くなっている」
そのように、自分の心や身体の中で起きていることを丁寧に観察します。
ここで大切なのは、不安や苦しい考えに従うことでも、それを正しいものとして受け入れることでもありません。
不安や考えに巻き込まれている状態から、少し距離を置き、
「これは今、自分の心に浮かんでいる一つの考えなのだ」
と気づいていくことです。
考え方そのものをすぐに変えられなくても、その考えに気づき、少し距離を取ることができれば、これまでとは異なる行動を選べる可能性が生まれてきます。
気づきや受容を重視し、考えや感情との距離の取り方を学ぶ方法は、第三世代の認知行動療法にも取り入れられています。
マインドフルメイトが行うマインドフルネス心理療法
私どもマインドフルメイトには、これまでに薬物療法やさまざまな心理療法に取り組んできたものの、思うような改善を感じられず、長い間悩んできた方からのご相談があります。
その中には、認知行動療法の説明は理解できても、自分の考え方を変えることがどうしても難しかった方もいます。
「考え方を変えなければならないことは分かっている」
「もっと前向きに考えた方がよいことも分かっている」
「それでも、心がついていかない」
そのような苦しみを抱えている方に、私どもは、最初から考え方を変えることを求めるのではなく、まずは今の自分の状態に気づくことから始めていただいています。
呼吸を通して、今の自分に戻る
心が不安や過去の出来事にとらわれているとき、頭の中では、さまざまな考えが繰り返されています。
「また悪いことが起きるのではないか」
「あのとき、違う行動をしていればよかった」
「これからも、この苦しみは続くのではないか」
こうした考えを無理に止めようとしても、簡単には止まりません。
そこで、マインドフルメイトのセッションでは、呼吸に意識を向ける実践から始めます。
呼吸を変えることだけが目的ではありません。呼吸に意識を向けながら、心が過去や将来へ向かっていることに気づき、そのたびに現在の自分へ意識を戻す練習を重ねていきます。
最初は、わずかな時間でも構いません。
考えを消すことや、何も考えない状態をつくることを目指すのではなく、考えが浮かんだことに気づき、再び呼吸へ意識を戻します。
この繰り返しを通して、自分の考えにすぐ巻き込まれず、心の動きを少し離れたところから見つめる力を養っていきます。
自分の心の動きを丁寧に見つめる
マインドフルメイトでは、呼吸法だけでなく、日常生活の中で自分の心に何が起きているのかを見つめる「自己洞察」の実践も大切にしています。
どのような出来事があったのか。
そのとき、どのような感情が生まれたのか。
身体には、どのような反応が表れたのか。
自分は何を考え、どのような行動を取ろうとしたのか。
それらを急いで良い方向へ変えようとせず、まずはありのままに気づいていきます。
自分の心の動きが少しずつ見えるようになると、不安や苦しい考えが生じたときにも、すぐに巻き込まれるのではなく、一度立ち止まる余地が生まれてきます。
その小さな余地が、自分にとって本当に必要な行動を選ぶことにつながっていきます。
一人ひとりの苦しさを伺うことから始めます
同じうつ病や不安症という診断を受けていても、その方が抱えている苦しみや、そこに至った経緯は異なります。
そのため、マインドフルメイトでは、最初から決められた方法を一方的に当てはめるのではなく、まず、これまでどのようなことで悩み、どのような治療や療法に取り組み、何が難しかったのかを丁寧に伺うことを大切にしています。
認知行動療法のどの部分に苦しさを感じたのか。
考え方を見つめることが負担だったのか。
課題を続けることが難しかったのか。
自分の気持ちを支援者に伝えられなかったのか。
その方の体験を伺いながら、現在の状態で取り組めることを一緒に考えていきます。
マインドフルネス心理療法も、すべての方に同じように合う方法ではありません。また、短期間の実践だけで、長く続いた症状が必ず改善するというものでもありません。
だからこそ、実際にどのような方法を行うのかを説明し、ご本人が納得したうえで、無理のないところから取り組むことが大切だと考えています。
認知行動療法が合わなかったという経験を、失敗として終わらせる必要はありません。
「自分には、考え方をすぐに変えようとする方法よりも、まず自分の心に気づく方法が必要なのかもしれない」
そのように、自分に合った回復への道を考えるきっかけにすることもできるのではないでしょうか。
なお、マインドフルネス心理療法は、医療に代わるものではありません。現在治療中の方や服薬している方は、治療や薬を自己判断で中断せず、主治医に相談しながら取り組むことが大切です。

認知行動療法が合わないと感じている方へ――無料相談会のご案内
ここまでお読みいただき、
「認知行動療法の説明は理解できても、自分の考え方を変えることができなかった」
「課題に取り組めない自分を、責め続けてきた」
「この療法が合わないと感じていたけれど、担当する方には伝えられなかった」
「自分には、どのような方法が合っているのか分からない」
そのように感じている方もいるかもしれません。
これまで、さまざまな治療や療法に取り組んできたにもかかわらず、思うような変化を感じられなかったとすれば、とてもつらかったことと思います。
周囲からは、
「もっと前向きに考えた方がよい」
「考え方を変えれば楽になる」
「焦らず治療を続ければよい」
と言われてきたかもしれません。
しかし、ご自身では何とか考え方を変えようと努力してきたのに、それでも変えることができずに苦しんでいるのではないでしょうか。
そのようなときは、一人で答えを出そうとせず、これまでの経過や現在感じていることを、誰かに話してみることも一つの方法です。
まずは、これまでのお話をお聞かせください
マインドフルメイトでは、うつ病や不安症、パニック症などのつらい症状に悩んでいる方を対象に、無料相談会を開催しています。
無料相談会では、最初からマインドフルネス心理療法への参加を勧めるのではなく、まず、これまでの経過をお伺いします。
- いつ頃から、どのような症状に悩んでいるのか
- これまでに、どのような治療や療法を受けてきたのか
- 認知行動療法の何が難しかったのか
- どのような課題が負担になったのか
- 現在、生活の中で何に困っているのか
- これから、どのような生活を取り戻したいのか
うまくまとめて話す必要はありません。
「何が苦しいのか、自分でもよく分からない」
「話そうとすると、言葉が出てこない」
という場合も、話せるところからで大丈夫です。
これまで誰にも伝えられなかった思いや、治療者には言い出せなかった気持ちがありましたら、そのこともお聞かせください。
マインドフルネス心理療法が合うかを一緒に考えます
無料相談会では、マインドフルメイトが行っているマインドフルネス心理療法についても、できるだけ分かりやすくご説明します。
どのようなことを行うのか。
どのくらいの期間をかけて取り組むのか。
日常生活の中では、どのような実践が必要になるのか。
現在の症状や生活の状態で、続けることができそうか。
こうしたことをご説明したうえで、マインドフルネス心理療法が現在のご自身に合う可能性があるのかを、一緒に考えていきます。
無料相談会に参加したからといって、必ずセッションへ進まなければならないわけではありません。
お話を伺った結果、現在は医療機関での治療を優先した方がよい場合や、マインドフルメイトの方法が適していないと考えられる場合もあります。
反対に、ご本人が「この方法に取り組んでみたい」と思われ、私どもも支援できると判断した場合には、双方で確認したうえで、次のセッションについてご案内します。
大切なのは、無理に参加を決めることではなく、内容を理解し、ご自身が納得してから判断することです。
「合わなかった経験」もお話しください
認知行動療法が合わなかったと感じている方にとって、その経験は決して無駄ではありません。
どのような説明が苦しかったのか。
どのような課題が続けられなかったのか。
考え方を変えようとしたとき、心の中で何が起きていたのか。
支援者に何を伝えられずにいたのか。
こうした経験を伺うことは、次の方法を考えるうえで大切な手がかりになります。
「自分が努力できなかったから、認知行動療法が続かなかった」と決めつける必要はありません。
ご自身の努力だけの問題として考えるのではなく、方法、進める速さ、課題の内容、支援者との関係、そのときの心身の状態なども含めて、一緒に振り返っていきたいと思います。
一人で悩み続ける前に、ご相談ください
認知行動療法が合わなかったからといって、回復を諦める必要はありません。
一つの方法が合わなかったという経験は、ご自身に合う方法を探していくための、大切な出発点になることがあります。
「考え方を変えなければならないことは分かっている。それでも変えられない」
「何を試しても改善を感じられず、どうしたらよいのか分からない」
「マインドフルネス心理療法が自分に合うのか、まず話を聞いてみたい」
そのように感じていましたら、マインドフルメイトの無料相談会で、現在のお気持ちをお聞かせください。
無料相談会は完全予約制の個人面談で、ご家族と一緒に参加することもできます。相談時間は、お一人約30分から50分です。相談自体は無料ですが、会場によっては施設利用料が必要になる場合があります。開催日、会場、対象となる方、申込方法などの詳細は、案内ページでご確認ください。
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なお、無料相談会およびマインドフルネス心理療法は、医療機関での診断や治療に代わるものではありません。現在治療中の方や服薬中の方は、治療や薬を自己判断で中断せず、主治医へ相談しながらご検討ください。
非営利型一般社団法人マインドフルメイト
代表理事 佐藤福男

山梨県を拠点に、東京都(八王子市・八重洲・日比谷)、愛知県名古屋市などで、マインドフルネスや心のケアに関する活動・情報発信を行っています。2010年より、ストレス、不安、人間関係などに悩む方々への支援活動を続け、これまでに600名以上の方に携わってまいりました。
「自分らしく生きていく」をテーマに、日常生活に活かせるマインドフルネスや、心を整えるためのヒントを発信しています。このサイトが、少しでも心を落ち着け、自分自身を大切にするきっかけとなりましたら幸いです。
