うつ病と前頭前野の働きを治して行くマインドフルネス

2025年1月18日

うつ病と前頭前野の働きを治して行くマインドフルネス

うつ病や不安障害・パニック障害・PTSD等が、薬物療法で治りにくいことや、再発が多いことは最近ではよく知られてきました。 その一因に、前頭前野の機能が薬物療法だけでは回復しにくい人がいるためであると思われます。 前頭前野を回復させる事が効果的であることを理解していただく為に、前頭前野と心の病気との関係を見て行きます。 tree_woods_00017-1.jpg

前頭前野の機能には

前頭前野の機能の一つはワーキングメモリ(作業記憶)です。 ワーキングメモリーとは、言語理解、学習、推論といった複雑な認知課題の解決のために必要な情報(外から与えられたもの、あるいは長期の記憶から呼び出したもの)を必要な時間だけ一時的にアクティブに保持し、それに基づいて情報の操作をする機構になります。 一瞬一瞬、刺激や他人からの問いかけに対して適切な情報を呼び出して保持し、処理して、答えや応答を出力します。それが終わったら、その刺激や情報はすぐに忘れてかまわないものです。しかし、すぐ次の瞬間に必要な情報の保持と検索、決断、処理があります。 その瞬間に、必要なことを思い出して処理していくことの連続です。

ワーキングメモリー(作業記憶)の働きとは

ワーキングメモリー(作業記憶)は4つの部分からなるとされています。 〇内容をリハーサルなどで言語的に保持するシステム 〇言葉ではなく、空間的なイメージを操作したり保持するシステム 〇「音声、視覚、空間情報を統合した表現を保持し、さらに意味情報や、音楽情報も統合する。長期記憶から引き出したものも保持するシステム 〇視空間記銘メモを制御し、長期記憶と情報をやりとりするシステム

背外側前頭前野や前部帯状回が重要な役割を果たしています。

うつ病の患者は、これらの機能が低下しているといわれています。うつ病、不安障害、過食症などになると、 仕事がうまくできなかったり、自分を苦しめる思考や行動をコントロールできませんので、ワーキングメモリーの機能がうまく働いていない状況にあることがわかります。 問題行動(自傷行為、虐待など)、非行犯罪もそうです。 重いうつ病では、主婦が料理もできなくなります。材料や作る手順を思い出せなくなります。 river_00017-2.jpg

薬物療法は、セロトニン神経や扁桃体に作用させる

薬物療法は、セロトニン神経や扁桃体に作用する薬が用いられますが、薬物療法だけでは回復しない人や、抑うつ症状(ワーキングメモリーとは無関係の部位の症状)が軽くなっても復帰できない人がいるのは、このワーキングメモリーの機能をはたす前頭前野などが十分に回復していないためであると、推測されます。 こういう心の病気や問題行動、非行犯罪などが薬物療法だけでは治りにくく、再発しやすいので、回復のためにはワーキングメモリーの機能、すなわち、背外側前頭前野の機能が回復するようなトレーニングが必要です。

マインドフルネスでは

「意志作用」が活発になる為のトレーニング

なお、前頭前野はワーキングメモリーの機能のほかに、種々の機能(記憶、プランニング、行動抑制、感情コントロール、意思決定など)があります。これらは心の病気と関係しています。こうした前頭前野の機能は、私達のマインドフルネス自己洞察瞑想療法では「意志作用」と言っています。 この意志作用の機能回復が、心の病気を治すことになりますので、私達はその「意志作用」が活発になる為のトレーニング等を行っています。 そのトレーニングを1ヶ月に一度のセッションの中で、課題と言う形で、ご自身の家で実施していただいていますが、参加者のほとんどの方が、まず辛い症状が緩和されていきます。 さらにセッションを継続する事により辛い症状が緩和~改善に向かって行きますので、完治(薬を飲まないでいられる状態)を目指す事が可能です。 sea-ocean_00003-1.jpg

うつ病と前頭前野の働きを回復させるマインドフルネスのアプローチ

うつ病は、脳の構造と機能にも影響を及ぼすことが知られています。その中でも、前頭前野(特に背外側前頭前野)は、意思決定、注意、自己制御といった重要な機能を担っています。しかし、うつ病の状態では前頭前野の働きが低下し、ネガティブな思考や感情に囚われやすくなるとされています。マインドフルネスは、この前頭前野の機能を改善する効果があると多くの研究で示されています。 以下に、うつ病と前頭前野の関係、そしてマインドフルネスがどのように前頭前野の働きを回復させるのかを具体的に説明します。

1. 前頭前野とうつ病の関係

前頭前野は、以下のような重要な役割を持っています:
  • 自己制御: 衝動を抑えたり、感情をコントロールする能力。
  • 注意力: 現在のタスクに集中する力。
  • 計画と意思決定: 将来の行動を計画し、それに基づいて実行する能力。
しかし、うつ病では前頭前野の活動が低下し、以下のような症状が現れやすくなります:
  • 注意力の低下(集中できない)。
  • ネガティブな思考のループ。
  • 意欲や計画性の低下。

2. マインドフルネスが前頭前野に与える影響

マインドフルネスとは、「今この瞬間」に意識を向け、感情や思考を評価せずに観察する心のスキルです。この実践が前頭前野にどのように影響を与えるのか、科学的な視点から説明します。

脳の可塑性を促進する

マインドフルネスは、脳の可塑性(神経回路が再編成される能力)を高め、前頭前野の神経ネットワークを強化します。これにより、注意力や自己制御力が改善します。

前頭前野の活動を活性化する

マインドフルネス瞑想を行うと、前頭前野の血流が増加し、脳の活動が活発になります。この効果は、日常的に実践を続けることで持続的に高まります。

過剰な扁桃体の反応を抑える

うつ病では、扁桃体(恐怖や不安を司る部分)の活動が過剰になり、前頭前野とのバランスが崩れることがあります。マインドフルネスは、扁桃体の過剰反応を抑え、前頭前野との調和を取り戻します。

3. 前頭前野を強化するマインドフルネス実践方法

以下は、前頭前野の働きを回復させるために効果的なマインドフルネスの実践方法です。

(1) 呼吸瞑想

呼吸に意識を集中させるシンプルな瞑想です。
  • 方法: 静かな場所で座り、呼吸のリズムに注意を向けます。「息を吸っている」「息を吐いている」と心の中で繰り返します。
  • 効果: 注意力が高まり、前頭前野が活性化します。

(2)マインドフルウォーキング

歩きながら意識を集中する動的な瞑想です。
  • 方法: 一歩一歩の感覚に注意を向け、足が地面に触れる瞬間を感じます。呼吸と動作を一致させると効果的です。
  • 効果: 前頭前野の活動を高めるだけでなく、身体的なリラックスも得られます。

(3) 思考観察瞑想

浮かんでくる思考を観察する方法です。
  • 方法: 思考をジャッジせずに「ただの思考」として眺めます。「これを考えているのは私だ」と気づいたら、呼吸に意識を戻します。
  • 効果: ネガティブな思考パターンのループを断ち切り、前頭前野の働きをサポートします。

4. 実践のコツと注意点

  • 少しずつ始める: 初めから長時間瞑想をするのではなく、5分程度からスタートすると無理がありません。
  • 毎日続ける: 継続的な実践が前頭前野に効果をもたらします。日々のルーティンに取り入れるのがおすすめです。
  • 期待しすぎない: 効果をすぐに感じられなくても焦らず、淡々と続けることが大切です。

5. マインドフルネスと医療の併用

うつ病が重度の場合、マインドフルネスだけでの改善は難しいことがあります。薬物療法や心理療法と併用することで、マインドフルネスの効果がより発揮されやすくなります。また、専門家の指導のもとで実践することで、安全かつ効果的に取り組むことができます。

まとめ

マインドフルネスは、前頭前野の働きを回復させ、うつ病の症状を緩和する可能性を秘めたアプローチです。特に、呼吸瞑想やボディスキャンといったシンプルな実践が、注意力や感情の自己制御を改善する効果を持ちます。毎日の小さな積み重ねが、前頭前野の回復とともに、心の健康への道を切り開きます。焦らず、自分のペースで取り組むことを大切にしてください。

うつ病を治して行くマインドフルネスとは、

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