うつ病に関係する主な脳の部位とその働き
2025年5月18日

ストレス社会のうつ病とは?
現代の日本は「ストレス社会」とも呼ばれるほど、日常的にさまざまなストレス要因にさらされています。働き方の多様化、情報過多、人間関係の希薄化、そして将来への不安。こうした背景の中で、心の不調を抱える人が増え、特にうつ病の発症率は年々高まっていると言われています。
そこで、うつ病が発症することにより私たちの脳細胞にどのような影響を及ぼすのかに付いてお伝えしていきます。
そもそもうつ病とは?
うつ病は、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失、意欲低下、集中力の減退、睡眠障害、食欲不振などの症状が続き、日常生活に支障をきたす精神疾患です。単なる「気分の落ち込み」とは異なり、脳内の神経伝達物質の働きの乱れが関わっていると考えられています。
なぜストレス社会でうつ病が増えるのか?
現代社会の特徴として以下の要因が挙げられます。
- 過重労働・過度な責任感
- 長時間労働や成果主義、人間関係の摩擦が常態化し、心の余裕を失いやすい。
- 情報過多・SNS疲れ
- 常に情報に接し続ける生活により脳が休まらず、自己肯定感も揺さぶられる。
- 孤立と希薄なつながり
- 昔のような地域コミュニティが減少し、気軽に相談できる相手がいない。
- 将来不安・経済的ストレス
- 物価高や不安定な雇用、老後の不安など、漠然とした不安を抱え続ける。
うつ病に関係する主な脳の部位とその働き
① 前頭前野(ぜんとうぜんや)【感情のコントロール・思考の整理】
- 機能:意思決定・集中・感情の抑制など
- うつ状態では:
- 活動が低下し、ネガティブ思考にとらわれやすくなる
- 注意散漫、集中力低下、意欲の減退などが起こる
② 扁桃体(へんとうたい)【感情の中枢】
- 機能:恐怖・怒り・悲しみなどの感情の処理
- うつ状態では:
- 過剰に活動する
- 小さな出来事でも大きく反応して不安や怒りを感じやすくなる
③ 海馬(かいば)【記憶・ストレスの調整】
- 機能:新しい記憶の形成、ストレスに対する制御
- うつ状態では:
- 萎縮が見られることがある
- 過去のつらい記憶が繰り返し再生されやすくなる
- 新しいことを覚えにくくなる
④ 帯状回(たいじょうかい)・側坐核(そくざかく)【やる気・報酬系】
- 機能:やる気・達成感・報酬に反応する
- うつ状態では:
- ドーパミンの分泌が低下
- 「楽しい」「うれしい」といった感情が湧きにくくなる
- 無気力・無関心状態になる
うつ病と神経伝達物質の関係
脳内では、神経細胞同士が“神経伝達物質”という化学物質で情報をやりとりしています。うつ病ではこのバランスが崩れることがわかっています。
神経伝達物質 | 主な働き | うつ病との関係 |
---|---|---|
セロトニン | 感情・睡眠・食欲の安定 | 減少 → 不安・焦燥・落ち込みが増す |
ノルアドレナリン | 集中・覚醒・ストレス対応 | 減少 → 意欲・エネルギーの低下 |
ドーパミン | 快楽・やる気・報酬系 | 減少 → 楽しさが感じられない、無気力 |
脳の機能回復に向けて重要なこと
- 休息と睡眠の確保
- 脳の回復には「深い睡眠」が必須。睡眠障害が続くと脳機能の低下が進む。
- 薬物療法(必要に応じて)
- 抗うつ薬は、神経伝達物質の働きを調整して脳機能を整えることが目的。
- マインドフルネスや心理療法
- 前頭前野の活性化、扁桃体の過活動の抑制など、脳のバランスを整える研究結果が多数ある。
- 脳トレや適度な運動
- 海馬や前頭葉の機能を高める。BDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌促進による神経細胞の再生支援。
うつ病は「脳の働きの病」
- 精神的なストレスや生活環境の変化がきっかけになっても、脳の構造や化学反応に変化が起きていることが分かっています。
- 逆に言えば、適切な支援や習慣の改善で、脳の回復力を引き出すことができるという希望もあります。

「マインドフルネスが脳に与える影響」
1. 前頭前野(ぜんとうぜんや)への影響
働き:思考・自己制御・感情調整・集中力などを担う中枢
● うつ病では?
- 活動が低下し、「ネガティブ思考」や「感情のコントロール困難」が起きやすい
● マインドフルネスの影響:
- 前頭前野の血流や神経活動を活性化させる
- 意識的に「今、ここ」に注意を向けることで、「自動思考のループ」から脱する手助けになる
- 瞑想習慣のある人のMRI画像では、前頭前野の灰白質の密度が高いという報告も
● 効果実感:
- 「気づいて立ち止まれる」ようになる
- 感情に振り回される前に冷静に対応できる力が戻ってくる
2. 扁桃体(へんとうたい)への影響
働き:不安・恐怖・怒りなどの“情動”を司る中枢
● うつ病では?
- 過剰に活動している状態になることが多く、心配やイライラが止まらなくなる
● マインドフルネスの影響:
- 扁桃体の過活動を抑える方向に作用
- 特に「呼吸瞑想」や「ボディスキャン」などで、「今の身体感覚」に注意を向ける練習が有効
- 長期的には扁桃体のサイズが縮小する可能性も報告されている(慢性ストレスの軽減と関連)
● 効果実感:
- 不安や怒りが少しずつ「波のようにやり過ごせる」ようになってくる
- 自分の感情を外から眺められる「観察者の視点」が育つ

3. 海馬(かいば)への影響
働き:記憶の統合・学習・ストレスの抑制
● うつ病では?
- ストレスホルモン(コルチゾール)の影響で萎縮しやすい
- 記憶力や集中力が落ちやすくなる
● マインドフルネスの影響:
- 海馬の灰白質の密度を増やす(瞑想習慣者で確認されたMRI研究あり)
- ストレス反応(コルチゾール分泌)を抑えることで、海馬の回復を促進
- 特に「やさしい呼吸観察」や「感謝の瞑想」などが有効
● 効果実感:
- 頭の中の“もや”が少しずつ晴れてくる
- 「思い出す」「考える」が楽になる感覚が戻ってくる
マインドフルネスは「脳を回復に向けて再調整する力」
脳部位 | マインドフルネスの効果 | うつ改善への期待 |
---|---|---|
前頭前野 | 活性化、集中・感情調整力の回復 | ネガティブ思考の抑制、自己肯定感の再構築 |
扁桃体 | 過活動の抑制、情動反応の調整 | 不安・イライラ・緊張の軽減 |
海馬 | 灰白質増加、ストレス耐性向上 | 記憶力・意欲・落ち着きの回復 |
補足:科学的根拠について
- 代表的な研究:Sara Lazar 博士(ハーバード大)によるMRI研究(2011年〜)
- 8週間のマインドフルネス実践により、扁桃体の縮小と前頭前野・海馬の灰白質増加が確認された
- その他:Jon Kabat-Zinn博士の「MBSR(マインドフルネスストレス低減法)」が多くの臨床研究でうつ・不安症に効果を示す
マインドフルメイトの相談会
マインドフルメイトでは、マインドフルネス心理療法を用いて、精神疾患の治療及び予防を行っています。その対策や予防が出来ずに過ごしてしまうと症状が長引くと仕事ができない、思うことができないと苦悩したり、悪化すると自殺したい、消えたいなどの気持ちが出てくる人がいます。マインドフルネス心理療法は、アメリカの臨床実験により、うつ病や不安障害やパニック障害やPTSD、摂食障害(拒食・過食)、依存症、家族の不和などに効果があることが確認されています。
以下をご覧ください。(クリック)↓ https://mindfulmate.jp/conference/
マインドフルネスのエビデンス(効果の検証)
マインドフルメイトでは、過去10年以上の活動データを基にエビデンスを制作しています。その方たちは、うつ病や不安障害・パニック障害等の症状で悩む方々になります。私たちは、それらの方々の苦しみの声に真摯に耳を傾け、その人・その人に相応しいマインドフルネスを提供してきました。
その結果が、10年間で600名以上になっていますのでその集約をマインドフルネスのエビデンスとしています。
以下をご覧ください。(クリック)↓ https://mindfulmate.jp/evidence/
この記事は以下の方が執筆しています。
佐藤福男
〇資 格 : マインドフルネス瞑想療法士(マインドフルネス総合研究所) マタニティー / 0才児 指導者資格(幼児開発協会) 一般旅行業取扱主任者(国家資格) 〇役 職: 非営利型一般社団法人マインドフルメイト代表理事・ マインドフルネス学校 学校長
【リンクのご案内】
〇カウンセラー・佐藤さんに聞く「マインドフルネス」実践と“想い”
https://mindfulmate.jp/practice-of-mindfulness-and-feelings/
〇うつ病や不安障害を乗り越えた体験談
https://mindfulmate.jp/impressions-after-the-mindfulness-session/
〇マインドフルネス相談会のご案内 IN東京都・愛知県・山梨県
https://mindfulmate.jp/conference/
〇マインドフルネスのエビデンス / 調査・研究・活動の報告
https://mindfulmate.jp/evidence/
〇マインドフルメイトのサイトマップ