痛みのマインドフルネス
2025年7月19日

痛みのマインドフルネス

痛みの中にいるあなたへ
その痛みは、誰にも代わってもらえないもの。
言葉にしようとしても、うまく伝えられないことがあるかもしれません。
まわりの人には理解されないと感じて、ひとりで苦しんでいる時間もあったのではないでしょうか。
でも、どうか忘れないでください。
あなたの痛みは、あなたの中にちゃんと存在している。
それは「気のせい」でも「弱さ」でもなく、あなたが今、確かに生きている証です。
つらい時には、「なんとかしなければ」と無理に戦おうとせず、
ほんの少しだけでも、その痛みに“気づいてあげる”ことから始めてみてください。
「今、痛みがあるんだね」
「つらいよね。ここに一緒にいるよ」
そんなふうに、自分の心に静かに寄り添ってあげるだけで、
少しずつ、痛みとの向き合い方がやわらいでいくこともあります。
今日、たとえ痛みが和らがなかったとしても、
あなたの中には、その痛みに優しく寄り添える力が、すでに育ちはじめています。
焦らなくていい。比べなくていい。
「今、ここ」にいるあなたを、大切にしてください。
痛みのマインドフルネスとは、
痛みのマインドフルネスとは、身体の痛みや不快感を「なくそう」としたり、「嫌だ」「怖い」と反応するのではなく、その痛みをあるがままに観察し、受け入れていくことで、痛みに対する苦しみを和らげていく方法です。
ポイントは「痛みそのもの」と「痛みに対する心の反応(苦しみ)」を分けて捉えるということです。

痛みのマインドフルネスの基本的な考え方
私たちは痛みを感じると、
- 早くなくしたい
- このままだともっとひどくなるのでは
- なぜ自分だけこんな目に
と、痛み自体に反応し、さらに不安や怒り、恐怖などの感情を重ねてしまいます。
すると、「痛み」+「心の反応」=苦しみが増幅され、余計につらくなるのです。
マインドフルネスでは、
痛みを消そうとせず、今この瞬間の痛みを客観的に観察する
痛みの場所、強さ、質、広がりを冷静に感じ取る
痛みから生まれる考えや感情も「今こう感じているな」と気づく
という態度を取ります。
痛みのマインドフルネスの実際のやり方
- 楽な姿勢で座る。
- ゆっくり呼吸に意識を向け、今の呼吸を感じる。
- そして、しずかにゆっくりと息を吐いていく事を繰り返えして行きます。
- しかし、痛みは起きて来ますので、
- その痛みを、あれこれと考えて膨らませていく事をしばらくおやすみします。
- 「ズキズキする」「重い」「ジンジンする」といった痛みの質を感じ取ります。
- その痛みのレベルを区分けして行きます。(例‐強い・弱い・並み)
- そして、しずかにゆっくりと息を吐いていく事を繰り返えして行きます。
- 痛みは、交感神経になりますので、
- しずかにゆっくりと息を吐いていく事を繰り返えして行きます。
痛みが起きて来た時・痛みを感じた時に、この事を繰り返して行きます。
この事により、次第に痛みと心の反応を分けて、淡々と眺めて行くうちに、痛みへの反応(苦しみ)が少しずつ和らいでいきます。

痛みのマインドフルネス実践法
準備すること
痛みのマインドフルネスを行う際は、まず静かで落ち着ける場所を選び、椅子に座るかベッドに横になるなど、無理のない楽な姿勢をとります。
- 静かな場所(ベッドの上や椅子でもOK)
- 5分〜10分ほどの時間
※痛みが強い時は無理せず、自分の体調に合わせて行ってください。
基本の流れ
背筋をまっすぐ伸ばそうと意識する必要はなく、自然に呼吸がしやすい姿勢が望ましいでしょう。
姿勢が整ったら、そっと目を閉じずに、まずは自分の呼吸に意識を向けます。吸う息、吐く息がどのように体の中を通っていくのか、その速さや深さ、胸やお腹の動きなど、今この瞬間の呼吸の状態をありのままに感じてみましょう。このとき、呼吸をコントロールしようとせず、「今はこうなっているな」と静かに眺めるような気持ちで行うことが大切です。
【ポイント】
①姿勢を整える
楽な姿勢で座るか横になります。背筋は伸ばしすぎず、呼吸しやすい姿勢をとります。
②呼吸に意識を向ける
目を閉じずに、まずは今の自然の呼吸に意識を向けます。
「吸う息」「吐く息」の流れを感じ、その速さ・深さを観察します。
※呼吸をコントロールしようとせず、「今こうなってるな」と眺めるだけ。
③痛みのある場所に注意を向ける
呼吸への意識が落ち着いてきたら、次に痛みを感じる部位に意識を向けます。たとえば、肩がズキズキ痛む場合、その部分にそっと注意を向け、「ここが痛む」と認識します。痛みがどんな質なのか、ズキズキとした痛みなのか、ジンジンとした感覚なのか、鈍い重さのような痛みなのか、その様子を感じ取ってみましょう。また、その痛みがどのくらいの範囲に広がっているのか、一定なのか、移動しているのかも静かに観察していきます。
【ポイント】
呼吸に意識が向いて来ると自然と痛みを感じて来ます。
そして、その痛みをレベルを感じ取ります。
- どこが痛むのか
- どんな痛みなのか(ズキズキ、ジンジン、鈍い痛み etc.)
- その痛みのレベルはどうか。(例‐強い・弱い・並み)
- 広がりや範囲はどうか
そして、しずかにゆっくりと息を吐いていく事を繰り返えして行きます。
痛みは、交感神経になりますので、
しずかにゆっくりと息を吐いていく事を繰り返えして行きます。

⑤痛みを言葉にしてみる
このとき、痛みの質や様子を心の中で言葉にするのも効果的です。「右の肩がズキズキしている」「だんだん広がってきた」と、自分に実況中継するように、淡々と語りかけるようにします。すると、痛みが単なる「嫌なもの」ではなく、「今ここにある現象のひとつ」として客観的に捉えられるようになります。
【ポイント】
痛みの質を、心の中で言葉にしてみましょう。
「今、右肩にズキズキする痛みがある」
「ジンジンとした感覚が広がっている」
と、自分に実況中継するように。
⑥痛みに対する気持ちも観察する
さらに、痛みを感じているときには、不安や怒り、焦りなどの感情も湧いてくることがあります。それに気づいたら、「今、不安を感じている」「少しイライラしてきたな」と、湧いてきた気持ちをそのまま認めるようにします。こうすることで、痛みに付随する感情の波に飲み込まれることなく、痛みと自分の反応を分けて見つめられるようになっていきます。
【ポイント】
痛みを感じていると、不安や怒り、悲しみが湧いてくることがあります。
それも「今、不安を感じてる」「イライラしてるな」と、湧いた感情をそのまま気づきます。

痛みのマインドフルネス実践のコツ
① 「痛みを敵にしない」ことから始める
❌「痛みをなくしたい」「痛みは悪だ」
✅「痛みはここにある。まず気づいてあげよう」
痛みを否定すると、苦しみはかえって強まります。
まずは「痛みがあるという事実」に、やさしく気づきましょう。
例:呼吸とともに「今、この瞬間に痛みがある」ことを認めるだけでも、第一歩です。
② 痛みと苦しみを分けてみる(一次苦と二次苦)
- 一次苦:身体的な痛みそのもの
- 二次苦:それに対する「恐れ・怒り・不安・絶望」といった反応
🔍「痛い…でも、それに巻き込まれている自分に今、気づいている」と観察してみる
気づいた瞬間、あなたは痛みに反応する自動操縦モードから離れ、自分を少し自由にできます。
③ 痛みを「固まり」としてとらえない
❌「ずっと痛い」「痛みが体全体に広がってる」
✅「今、足の内側にチクチクする感覚がある」「強さは10段階中6くらい」
「痛み」とひとまとめにせず、変化する感覚の集合として細かく観察することで、
「痛み=全身を支配するもの」という認識から距離をとることができます。
④ 痛くないところにも気づく(全体への注意)
- 痛みばかりに注意を向けると、世界が痛みだけになってしまいます。
- 痛み以外の場所(足の裏、手のひら、呼吸など)にも意識を向けてみると、注意のバランスが戻ります。
例:呼吸の感覚を感じながら、「痛み」と「呼吸の静けさ」の両方に気づく
⑤ 慈悲の心を育てる(セルフ・コンパッション)
💬「つらいね。がんばってるね」
💬「今この瞬間、自分に少しだけ優しくしてあげよう」
痛みの中にいると、自分を責めたり、孤独を感じたりしやすくなります。
そんなときは、自分自身に向かってやさしい言葉をかけてみてください。
それが苦しみを和らげる強い土台になります。
痛みのマインドフルネス:簡単な実践例
🔹「3分間やさしく気づく」呼吸瞑想
- 楽な姿勢で座る、または横になる
- 痛みがある場所に注意を向ける(ただ気づく)
- 呼吸に意識を向けて、数回、ゆっくりと吐く
- 呼吸とともに、「痛みがここにある。でも、私は今ここにいる」と心の中でつぶやく
- 終わりには、手を胸に当てて「ありがとう」と一言。自分にやさしく。
補足アドバイス
- 最初はうまくできなくて当然です。「できていない自分」にもやさしくいてください。
- 無理に痛みに集中し続ける必要はありません。逃げたくなったら意識を他に移してもOKです。
- 短時間でも、日々続けることが、心と神経系にやさしく効いてきます。
痛みのマインドフルネス実践は、痛みを「なくす」のではなく、「その痛みと穏やかに共にいる力を育てる」ことが目的です。
痛みのマインドフルネスはこんな方にもおすすめ
- 慢性腰痛・肩こり・偏頭痛など慢性的な痛みに悩む方
- 痛みに不安や恐怖が強い方
- 痛みによってイライラ・不安定になりやすい方
病院の治療と並行して行うことで、心の負担を減らす補完的ケアとしても非常に効果的です。

痛みに寄り添うマインドフルネス ― 科学が示す心と脳への効果
「痛みのつらさは、その人にしかわからない」
そんな深い真実のなかで、私たちはどうすれば少しでも穏やかに日々を生きていけるのでしょうか。
そのヒントをくれるのが、「痛みのためのマインドフルネス(Mindfulness for Pain)」です。
マインドフルネスは、単なる精神的なリラクゼーションではありません。
脳科学・心理学・医学の分野で効果が立証された、痛みに向き合うための具体的な方法です。
マインドフルネスが痛みに効く理由
1. 痛みの“つらさ”を変える
脳は、痛みそのもの(感覚)と、それに伴う「苦しみ(ストレス・不安・恐れ)」を別々に処理しています。
マインドフルネスを実践すると、この「苦しみ」を生み出す脳の反応が変化します。
MRI研究では、マインドフルネス実践によって
- 前頭前皮質(集中・判断の中枢)が活性化
- 扁桃体(恐怖や過剰反応の中枢)が抑制
されることが確認されており、痛みに対する過敏な反応が和らぐと考えられています。
❝ 痛みの強さは変わらなくても、つらさは軽くできる ❞
ということです。
2. 「痛みに対する抵抗」を減らす
痛みそのものよりも、「また痛くなるのでは」「もう治らないのでは」といった**思考や感情の反応(二次苦)**が、苦しみを増幅します。
マインドフルネスは、「今ここ」に意識を戻し、痛みと闘わずに観察する力を育てます。
こうした姿勢が、ストレスや抑うつの軽減につながると、多くの研究が示しています。
3. 鎮痛薬依存の軽減にも役立つ
近年の研究では、マインドフルネスによって鎮痛薬(特にオピオイド系)の使用を減らせる可能性も示されています。
「自分自身で痛みをケアできる感覚(自己効力感)」が育つことで、薬に頼りすぎない選択肢が広がります。
💡 実際に、英国NHS(国民健康サービス)やアメリカの医療機関では、慢性痛への補完療法としてマインドフルネスが活用されています。

実証されたプログラムの成果
◉ Breathworks(ヴィディヤマラ・バーチ氏による慢性痛向け実践)
- 慢性痛を抱える受講者の約70%が「痛みの感じ方が変わった」と回答
- 不安・抑うつ・怒りなどの軽減と、生活の質(QOL)の向上が確認されています
◉ MBSR(マインドフルネス・ストレス低減法)
- 慢性腰痛、線維筋痛症、がん性疼痛などの患者に対して、数多くの臨床試験で有効性を確認
- 8週間のプログラムにより、痛みの受け取り方や自己評価が大きく改善
まとめ:痛みを「変える」のではなく、「関係を変える」
マインドフルネスは、「痛みを消す方法」ではありません。
でも、その痛みとの“関係性”を穏やかに変えることは可能です。
- 「痛み=敵」として戦うのではなく
- 「痛み=今ここにある経験」として、そっと寄り添う
そんなやさしい姿勢を育てていくことで、苦しみの輪から一歩離れる道が見えてきます。
たとえ今日すぐに痛みが消えなくても、
今日から少しずつ「自分自身と共にいる力」を育てていくことはできます。
痛みのマインドフルネスは、慢性痛や手術後の痛み、不安症状を伴う痛みなどにも効果が報告されています。
特に脳科学では、
- 前頭前野:痛みに対する冷静な観察・コントロール
- 扁桃体:痛みへの恐怖・不安の抑制
この二つの働きによって、痛みの「感じ方」が変わることがわかってきました。
痛みの強さ自体が完全になくなるわけではなく、苦しみ方が変わるというのが特徴です。

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